みなさんが飲む水、「真水」には限りがあります。しかも意外なことに、地球上の真水は枯渇しかけているといいます。
仮に未来技術が進んで大量の水を製造・確保・ストックできたとしても、今回示す3つの要因を考えると決して安心できる状況ではありません。
今回は未来技術と水循環について解説しています。人間にとってなくてはならない貴重な水の話です。みなさんの参考になれば幸いです。
水不足の問題を生じさせている3つのコト
世界で起こっている水(資源)問題の原因には主に3つあります。第一は爆発的な人口増加、第二は激しい気候の変動、第三は深刻化する水紛争です。順に解説していきます。
第一の原因:爆発的な人口増加
人が増えると当然ですが水の使用量は増えます。人間の体の多くを占める水分は生命維持に不可欠だからです。
日本の総人口は減少していますが世界では逆です。どんどん人が生まれています。地域によっては爆発的に人口が増えていて、人が増えた分、水を使う量も増えているのです。
その増え方について、公的なデータもあるので以下で見ておきましょう。
国際連合(国連)の「世界の人口推計(2015改訂版)」によれば、世界の総人口は2015年時点で約73億5,000万人とされていますが、2050年には約97億3,000万人になると予測されています。およそ25億人ほど増える推算です。
さらに、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「World Water Resources at the Beginning of the 21st Century (2003)」によると、世界の水の使用量は1950年(昭和25年)から1995年(平成7年)の間に、約2.74倍となっており、同期間の人口の伸び(約2.25%)よりも高い結果となっています。
人口の伸びよりも水使用の伸びの方が大きいということです。
特に生活用水の使用量は6.76倍と急増しています。
第二の原因:気候変動
なぜ気候変動が水不足や水の枯渇問題に関係するのか。水不足の原因を気候変動の面から考えます。
まずもっとも重要なことは「降水量が変動することで使える水の量が大きく変化する」ということです。
大雨や干ばつなどの異常気象を引き起こしている気候変動は地球温暖化が原因ですが、これが水の利用可能量に大きな影響を及ぼしています。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)の「第5次評価報告書(2014)」では、ここ数十年、気候変動は、全ての大陸と海洋にわたり、自然(物理、生物)及び人間システムに影響を与えているとされています。
最近は、ゲリラ豪雨や大型台風が増えていますし、夏場の気温は昔に比べてすさまじく上がっています。ひとたび災害がおきると二次被害が拡大しやすくなっています。
結果、大地は干上がるか、逆に短期間に強い降雨があると土地が飲める水がキャパを超えて消化(吸水)不良を起こす。
水の循環が真っ当に行われず不安定になっており、洪水や干ばつが世界各地で多発しています。
災害疫学研究所(CRED: Centre for Research on the Epidemiology of Disasters)によれば、2015年には、国家レベルの洪水、干ばつがそれぞれ152件、32件発生し、影響を受けた人は洪水が約3千万人、干ばつが約5千万人に上ると報告されています。
水を巡る紛争
日本に住むみなさんは水を巡る紛争についてピンとこないかもしれません。
日本でも歴史的には水を巡る紛争はありました。農業用水などは利用権が決まっているので大きな紛争にならずに済んでいます。
ただし、世界各国を見てみると様々な要因により水紛争が起きています。
水紛争の主な原因は4つあります。
第一は水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)、第二は水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など)、第三は水の所有権の問題、第四は水資源開発と配分の問題です。
水は生きていくのに不可欠であり貴重なものだからこそ争ってでも手にしておきたいと考えるのでしょう。
水をめぐる悪循環はこれから加速する
水資源をめぐる3つの原因は相互に絡み合っています。
飲み水となるきれいな真水は地球上に限りがあるため、人口増加に伴って足りなくなることが予想されています。
さらに水循環の観点からは、世界各地で起こっている砂漠化が、水不足に拍車をかけています。気候変動によって干ばつに悩む国が増え、さらに過剰な木の伐採や開墾耕作、家畜の放牧により、土地の砂漠化が広がっているのです。
砂漠化は、農地で化学肥料と農薬を使い過ぎ、地中のバクテリアが死ぬことでも進みます。土に栄養素がなくなり、塩害が増え、土地が劣化して渇いてしまう。
その結果、さらに干ばつが進み、水不足はもちろん食糧不足が起こっている地域も多いという状況です。
水が空気のようになっていることは科学の発展から見れば当たり前
人間社会における水は、大きく4つの段階・変化を経て現在の「水」となっています。
第1の段階は「水は貴重なもの」という古代文明のころからの話。その後、第2段階に「水は一部の人にとっては普通のもの」になり、第3段階に「ほとんどの人の手に渡るもの」になり、第4段階に「飾りにも使われるもの」になっています。
具体的には、水は第1段階にあたる古代にはとても貴重で一つの井戸を村全体で使う必要があ理ましたが、1900年代の初頭になると次第に家庭に水道が導入されはじめ、第2段階の普通のものへ移行します。
さらに第2次世界大戦後には、水道が普及したことで広く多くの人にとって使えるほど安価になり中産階級にも普及しました。
そして、現在では、水は第4段階にあり装飾的な表現(噴水やディスプレイ)として、世界を飾り立てるものになっています。
世界中で水をめぐる問題や水資源の枯渇が危惧されている中、水が豊富になるところでは社会を飾り立てるために利用されています。
おわりに
今一度、これからの水問題について考えてみるときが来ていると思います。
こうした水環境・水循環は農業とも関わりが深いです。循環型農業などが代表例です。ICTを使ったスマート農業などがこれから本格化しますが、その際にも水問題は非常に関わりが深いので十分に留意する必要がありますね。
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