dandy maker

39歳・コンサルタント・エンジニアです。「やっときゃ良かった」を防いでいい男の最高峰を目指しています。未来技術と健康・減量など役立つ情報を発信しています。

【ファッション】環境に優しい靴の人気が出てきている理由

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エコシューズから地球環境保全とゼロカーボンを考える(出典:写真AC)

地球環境保全に配慮した製品開発が新たな段階に入ったと思います。すでに低炭素社会を実現するためにエコカーやエコ家電が一般的になっています。

 

だけどローカーボン化しにくいアイテムもあります。その一つには靴があります。

 

今回は環境に配慮したスマートでエコなシューズについて科学的な視点から考えてみたいと思います。

サステナビリティー(持続可能性)に配慮したシューズ

地球環境への配慮から脱炭素や脱プラスチックが叫ばれているなか、サステナビリティー(持続可能性)に配慮している靴が注目されています。

日常的に身につけるアイテムに低炭素なものが増えると

 

自分の生き方やポリシーに「環境」をとり入れることができますね。

 

また、これを身につけることで他者に対して「エコでスマート」であることを主張することもできる。

 

こういう「エコでスマート」な価値観をもつヒトが増えていくのがこれからの社会なのかもしれないと思います。

 

でもなぜ靴の低炭素化が進んだのか。まずはここから考えてみましょう。

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低炭素(出典:写真AC)

多くの資源が使われる人工物

身の回りの多くの製品は我々の想像以上に多くの資源が使われています。

 

代表的なものがプラスチックやポリエステルでしょう。

 

世界のプラスチック生産は1960年代から2019年では約20倍の4億トン/年。20年後にさらに2倍の予測がされています。

このうちリサイクルされているものはほんの1割に過ぎず、回収されたプラスチックごみの約8割が埋め立てや自然界(海洋等)へ投棄されています。

靴底にゴムがあると思いますが、履き潰された靴やサイズが小さくなって履かなくなった靴は捨てられますがほとんどの靴が廃棄されたあとには土に戻れないという事実もあります。

 

環境に優しい靴とはこれらの代わりに「生分解性」の人工物を使うという試みです。

 

生分解性とは、微生物を使って自然に戻す性質。もっというと微生物を意図的に働かせて、分子レベルまで分解し、最後は二酸化炭素と水となって自然界に戻す、これにより循環していく性質をいいます。

生分解性の素材だからといって製品や素材の見た目が悪くなるということはなく、むしろ見た目のオシャレさや機能性、身につけた時の快適性も犠牲にしない。

 

未来の持続可能性に向けて「足元」から準備が始まっています。

 

製造過程におけるカーボン排出

カーボンは製造業に限らずあらゆる社会活動で配慮されてきました。昭和・平成、そして令和に入ってもなおローカーボンや環境配慮型製品であることの重要性が求められています。

環境配慮への方法は3つあります。第1は自然由来のものに代替(読み:だいたい)すること、第二は、製造から販売までのプロセスを改善するもの、第3は、社会全体の意識・行動の変容を促すことです。

プラスチックやポリエステルの排出量を抑えるために、生分解性を備えた素材や素材そのものが天然のウール・木・サトウキビなどを使用するというものです。

物を作る企業に限らず、調達過程で多くのカーボンが出るのも避けられません。モノが作られる過程では必ずフットプリント(足跡)があります。

人工物と生物の重量比較などについては本ブログの以下の記事で紹介しています。興味があればご覧ください。

www.dandy-maker.xyz

エコロジカル・フットプリントの起源

エコロジカル・フットプリントの元となる概念は、1990年代初期にカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のウィリアム・リースとマティス・ワケナゲルにより「収奪された環境収容力(Appropriated Carrying Capacity, ACC)」として提唱されています。

この用語が難解であったため「人間活動が地球環境を踏みつけにした足跡」という比喩に基づき、「エコロジカル・フットプリント(EF)」と言う用語に変更されたのです。(文献にこの用語が用いられたのは、1992年のリースの論文が初出)

リースがエコロジカル・フットプリントに与えた定義は次のようなものです。

 

ある特定の地域の経済活動、またはある特定の物質水準の生活を営む人々の消費活動を永続的に支えるために必要とされる生産可能な土地および水域面積の合計

 

エコロジカル・フットプリントは、生物学的な生産力と比較することによって持続可能な利用ができているか、あるいは需要過剰(オーバーシュート)となっているかを明らかにする指標として使われています。

今では、カーボン・フットプリントやウォーターフットプリントといった言葉もありますね。

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エコロジカル・フットプリントは持続可能性の鍵を握る(出典:写真AC)

天然素材をシューズに活用できる理由

エコシューズには具体的にどんな素材が使われているのか。以下で見ていきます。

メリノウール

メリノウールとはメリノ種の羊を使った毛のことです。羊の毛は暖かいイメージがありますが、実は通気性が非常に高く評価されています。

 

また、メリノウールは吸湿性が高く、汗を素早く吸収・発散してくれます。

 

このメリノウールをシューズ作りに応用するための新技術(伊・SoftKnitなど)が開発されました。耐久性の向上と素材特性の活用を目的としたテクノロジーです。

例えば、環境に徹底的に配慮したオールバーズ社の靴は羊の毛を使うことで従来の合成素材よりも、エネルギー消費を60%も削減できるとのことです。

リサイクルボトル

ペットボトルをリサイクルして靴のパーツに活用するものです。例えば、ペットボトル1本から靴ひも2本が生まれます。これも環境配慮の3つの方法の第1の配慮事項です。

ヒマシ油

ヒマシ油とは「トウゴマの木が原材料となる油」です。トウゴマの木は二酸化炭素吸収力に優れています。

 

インソールのクッション性を向上してくれるのでひざに与える衝撃をやわらげる効果もあります。

 

靴のソールには高い耐久性が求められるのでクッション材をふんだんに使うのですが、これまでのクッション材の素材は石油由来のプラスチック。この代わりにトウゴマを使ったヒマシ油にするというものです。

二酸化炭素削減効果の高い天然素材「ひまし油」由来のポリウレタンソールに使われた靴は、環境に優しいということですね。

リサイクル段ボール

シューズの箱は色々な使い道もあるのでしょうがこれも資源です。環境配慮の3つの方法の第2の配慮事項です。製造過程での工夫に対応するとすれば、梱包材もリサイクル段ボールで作られているのです。

 

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これまでのスニーカーの概念を覆す(出典:写真AC)

ブランド紹介

徹底して環境に配慮した靴「オールバーズ」

オールバーズは2020年に米国で生まれた靴ブランドです。俳優のレオナルド・ディカプリオ氏などもオールバーズの靴を愛用しているそうです。

 

オールバーズの特徴は徹底して環境に優しい靴づくり。

 

環境に配慮しつつも柔らかく軽い。結果「世界一快適な靴」として米・タイム誌から評価を受けています。だいたいこの手の良い商品はセレブ層からはじまりますが間も無く爆発的にニーズが高まることと思います。

 

政府が2050年までに温暖化ガス排出量を実質ゼロにするという方針を出してから環境意識が高まっています。若者を中心に人気が出ているそうです。

土に還(かえ)るスニーカー・ミライェ

サステナブルを意識した靴にはもう一つ「土に還(かえ)るスニーカー」こう銘打って、スタートアップのミライェ(東京・千代田)は20年、天然ゴム底のスニーカーを発表しました。

天然ゴムを発泡させる独自技術を使いゴム底の軽量性と衝撃を吸収する機能を両立させている点が特徴的です。

アディダス

大手ブランドも環境配慮へと舵を切っている。アディダスは2024年までに全商品で新品のポリエステル使用をやめる方針。まず人気モデル「スタンスミス」で再生ポリエステルの使用を始めることとなっています。

ナイキ

米ナイキも重量換算で25%以上のリサイクル素材を使ったバスケットボールシューズを発売しています。脱炭素や廃棄物ゼロの理念を取り入れた同社初の競技用のシューズです。靴の上部などに特殊な素材を使ったほか、ナイキのロゴマークのスウッシュにもリサイクル材を使い、識別しやすいようにマーブル模様としている点が特徴的です。

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世界中で環境に配慮されている(出典:写真AC)

エコな革靴も技術的には可能になりつつある

 

今年2月には天然皮革より環境負荷の小さい植物性の代替皮も開発されているそうです。こちらも従来の天然皮革と比べCO2排出量を40分の1にまで減らせるという。これを使えば、よりフォーマルな商品、例えば革靴も作れるのではないかと期待しています。

代替肉や代替素材が徐々に社会に出てきています。

賢く選択するための選択肢が増えていますね。

 

未来は、「今、我々が何を為すか」にかかっている。

The future depends on what we do in the present.

- Mahatma Gandhi (ガンジー) -

 

未来は自分たちで作れると思います。